怖い顔

 

父のお姉さんが入院した。

父が保証人として病院に行ってきたらしい。

お姉さんは近日中に退院できるそうだ。良かった。

 

 

昨日の朝早く父からテレビ電話があって、

「お姉さんには子供がいないから、

 何かあったら、自分が家のことをどうにかしたりしないといけない。

 家の中はぐちゃぐちゃで、全く片付いていなくて、心配だ。

 お姉さんが退院したら、半月くらい向こうに滞在して、

 いろいろしてこなければいけないかもしれない。

 もう最近はそのことばかり心配で、ずっと眠れていない。」

などと、眉間にしわを寄せて、怖い顔で、同じことを繰り返し言っていた。

 

私が、

「今そんなことを心配しても仕方ないし、

 家の中がぐちゃぐちゃなことは、お父さんには関係ないし、

 退院したおばちゃんにそんな怖い顔で『片付けろ』と言うのはやめてほしい。

 なるようにしかならないのだから、どうしたいのか希望だけ聞いておけばいい。」

と言うと、

 

父は怒り出して、

「俺が近所の人に、何もしていないと責められる。

 今さら入院のときに自分の名前を出されて迷惑だ。」

と言って、電話を切ってしまった。

 

 

 

私は父の借金を整理している。

父がおばちゃんに何度かお金を振り込んでもらっていることを知っている。

おばちゃんは父より常識人であると思っている。

 

 

「親であるだけで偉い」は私は同意できない。

育てていただいたことに感謝をしていない。

父につきあうことを苦痛に感じている。

でも、親だから、義務感でつきあっている。

おばちゃんが亡くなったときに起こりうる面倒より、

父が生きている限りかけられ続ける迷惑を懸念している。

 

 

画面越しの、父が「お姉さんには跡継ぎがいないから」と言うときの顔。

見ていたくなかった。

 

私はあの顔をしていないだろうか。

今この文章を書きながら、あの顔をしているのか。

 

嫌な言葉は顔を醜くする。